完璧執事の甘い罠
主と執事
「でもそれは、執事として。それ以上でも以下でもありません」
それは暗に、フラれたのだという事。
側にはいてくれるけど、それは執事としてであって、仕事としてであって。
私の側にいたいからではない。
ジルにとっては、結局私はお母さん・アリス様の娘であって。
ただの、今の主。
そんな事、わかりきっていたのに。
お姫様扱いなんて不慣れな私が自惚れて期待しすぎただけ。
私が、馬鹿だっただけ。
「・・・くしゅ」
身体を走る悪寒に、襲ってきたくしゃみ。
食品庫に閉じ込められたことによってすっかり風邪をひいてしまったらしい。
ベッドにもぐりこんで眠るでもなく悶々と考え込む。
あれからジルは、全く態度も変えず私の執事として働いている。
そのことが余計に私の心を抉る。
少しくらい動揺してくれてもいい。
私ばかりが空まわってかっこ悪い。
私の告白なんて、ジルにとっては取るに足らない子どもの戯言のようなものなんだ。