完璧執事の甘い罠
私は用意を済ませ、馬車に揺られシーエン王国へ向かっていた。
同じ馬車にはジルが同席しているけど、一言も会話はなく気まずい空気の中。
ジルは何を考えてるんだろう。
気まずいと感じているのは私だけなのかもしれない。
こんなに長い時間馬車に揺られるのはもちろん初めて。
体調が悪いこともあり、普段は乗り物酔いなんてしないけど、次第にその揺れに気持ち悪くなって来ていた。
「・・・ひなさま?」
「っ、ごめ・・・気持ち悪い・・・」
込み上げて来る吐き気に口を押さえ、そう訴えると、ジルは慌てたように外に馬で並走していたノエルに声をかけていた。
しばらくして馬車が止まり外から扉が開かれると、爽やかな外の空気が入って来る。
「おい、大丈夫か?」
ノエルが中を覗き込み心配してくれる。