完璧執事の甘い罠
すっかり眠ってしまったひなを両腕に抱えあげ、エリックは歩き出した。
抱えた体はやはり熱く、かなり高熱のように思える。
それほどまで我慢し公務をしていたひな。
「エリックさま!」
そんなエリックの前に現れたのは、ひなの執事であるジル。
ジルは少し焦った様子でひなを心配して駆けつけたようだった。
「熱が出ているようなので、部屋に連れて行くよ」
「ね、熱!?すみません。私が代わります」
「いや、いい。僕がこのまま運ぶから」
「しかしっ!」
エリックはジルの申し出を断るとジルの横をすり抜けて歩き出す。
ジルは戸惑ったように視線を揺らし、エリックを振り返る。
「エリックさま!」
「君は、何を見ていたんだい?」
「え・・・」
「君は、この子の執事だろう?彼女の体調にここまで気づかず、無理させるなんて・・・、執事としてなっていないんじゃないか?」
厳しい口調でそう言うと一度ジルを振り返りまっすぐ見据えた。
ジルはその言葉に何も言い返せず苦しそうに唇を噛んだ。