完璧執事の甘い罠
「初め会った時から顔が赤いと思っていたんだ。それでも、緊張からなのかと思いとどまった。その時にきちんと声をかけておくべきだった」
スッと視線を逸らし、エリックはそう呟きながら歩き出す。
ジルは言われた言葉をグッと噛み締めながら、エリックの後を追った。
「ジル?どうした」
エリックの後を追う途中、他の任で離れていたノエルがジルに気づいた様子で声をかけた。
「ひなさまが、体調を崩されたようで」
「は?・・・で、王子自ら運んでんのか」
「ノエル、言葉を慎んでください」
ジルはそう言うと一度悔しげに前を見た。
ひなの異変に気づかなかった自分が憎い。
いつだって、誰よりも寄り添っていたいと願っていたのに。
「しっかりしろよ、ジル」
「・・・わかっています」
「あいつ、なんか悩んでる風だったからな。ケンカでもしたんだろ?」
「え・・・、あ、い、いえ・・・」
ジルは、ノエルの言葉に歯切れ悪く答えた。