完璧執事の甘い罠
「まだ夜はあけないから、もう少し眠るといい。もう熱は下がってるようだけど、無理は禁物だよ」
「・・・はい」
エリック王子の言葉に、私は目を閉じる。
少しだけ、寂しさを感じながら。
前、熱が出た時には、ジルが側にいてくれた。
いつものキリッとした無表情で、冷静に。
ジルが作ってくれたりんごのすりおろしはとても甘くて美味しかったんだ。
お母さんの優しさを思い出して、切なくて嬉しかった。
もうジルは、側にいてくれないのかな。
執事としての優しさを勘違いするような姫なんて、呆れてしまったのかな。
ふと、額に温もりを感じる。
エリック王子の手が、私の額辺りを優しく撫でてくれていた。
温かい。
それでも、やっぱり私が側にいてほしい人は、彼ではないの。
それでもやっぱり、ジルが側にいてほしい。