完璧執事の甘い罠
なんで私が、ジルに対して気まずい思いをしているかわからないってことだよ。
ジルにとって、私の存在って、私の気持ちってその程度の事だったんだ。
「わからないならいい」
「・・・ひな様?」
「ジルにとって、私は仕事相手だってことよくわかったから。私が勝手に勘違いして突っ走っちゃっただけだってよくわかった」
悔しくて、悲しくて、どうしようもなくて。
だって、こんなのってない。
「ひな様、私は・・・っ」
ジルが、声を張り上げ何かを言おうとした瞬間、馬車が大きく揺れ止まった。
「きゃっ!?」
「何事・・・!」
外が騒然としている。
なにかが起きているのだとすぐに気付き、恐怖がよぎった。
「ひな様、私の側に!」
「・・・うん」
さっきまで、言いあいをしていたけれど、恐怖には変えられずジルに駆け寄る。
ジルは私を護るように抱きしめると、馬車の外へと意識を向けている様だった。