完璧執事の甘い罠


「ひな様、何があっても私から離れないでください」



ジルが私の身体を強く抱きしめる。
こんな時だというのに、ジルに触れられたところが熱くドキドキと胸が鳴る。

結局私は、いくらジルが私の事をなんとも思っていなかったとしたって諦めることができないんだと思い知る。



「ジル・・・、でも・・・」

「あなたの事は、私がお守りします」

「・・・」

「そう、誓ったのです」




ジルは力強くそう言う。
勘違いしてはいけない。

それは、私が主でジルが執事だから。
そして、私がお母さんの娘だから。



ジルが好きなのは、今でもきっとお母さんなんだ・・・。



「きゃぁっ!?」



突然馬車が大きく揺れ、私たちは開かれた扉から外へと投げ出された。
私はジルの身体に護られ、強い痛みを感じることはなかった。




「ひな!ジル!」



ノエルの焦った声が聞こえる。
よかった、ノエルは無事なんだ。
外の様子が全く分からなくてとても不安だった。



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