完璧執事の甘い罠
武装した人たちは何かを訴えるでもなく剣を振り上げると、私たちに襲いかかってくる。
私を守るように周りを固める騎士達がその剣に向かっていく。
薙ぎ倒され赤い血が飛ぶ。
それでも、何度も何度も立ち上がり、剣を振り上げる。
「やめ・・・やめて・・・!もうやめて!!」
なんでこんなこと。
誰にも傷ついてほしくない。
「ひな様!危険ですから下がって!」
ジルが私を庇うように抱きしめる。
守ってなんていらない。
私のせいで誰かが傷つくのはいやなの。
そう思ったはずなのに。
叫ぶことしかできない。
剣を手に戦うことも、あの人たちを止めることも、怖くてできない。
「いや・・・もう、これ以上・・・」
「ひな様!」
突然強く突き飛ばされ、私は地面に叩きつけられる。
この感覚には覚えがあった。
町にジルと出かけた時。
あの時もこうして・・・。
「ジル、ジル!!!」
ジルが肩を押さえながら踞る。
その肩からは赤い血が流れている。