完璧執事の甘い罠


「私は、平気です・・・。ひな様は、下がって・・・」



それでもなお、私を守ろうとするジルに涙がこみ上げてくる。
なんでこんなにも私を守ってくれるの。
執事だから?

そんなの、してほしくないのに。
ジルにも誰にも私のために傷ついてほしくないよ。



みんなが、私のために戦ってる。
私のせいで傷ついていく。



もうやめて。
これ以上。

誰も傷ついてほしくない。




ノエルに剣を弾かれ戦う武器を失った相手が拳を振り上げ私を庇うジルに標的を変え襲ってくる。

ノエルも他の騎士達も、他の敵の攻撃を受けていてこちらに向かえる者はいない。
ジルは傷を押さえながら、傍らに落ちていた剣に手を伸ばす。
でも、傷を負った体で重い剣を持ち上げられるはずがない。

傷口からは今もなおドクドクと血が溢れ出している。




これ以上血を流しては死んでしまう。





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