完璧執事の甘い罠


「アルバーナに姫君がと聞いて、どんな者なのか気になってな」

「・・・気になってって・・・」

「そのために来てもらったのだ」




言葉を失う。
それはつまり。

私に会いたいがためにあんな風に襲って無理やり連れてきたというの。
たくさんの人を傷つけ、苦しめた言い分が、それ。




「姫は無傷でとの命に背いた男は、処分したから安心しろ」

「――――ッ!処分ですって・・・!?」

「なんだ、血相を変えて。自分を傷つけた者だぞ?どうなろうと関係なかろう」

「そんな!確かに、許せないけど・・・!だからって、よかった、なんて言えるわけないでしょう!?」




わからない、この人が何を言っているのか。
処分、という言い方にそれ以上つっこんで聞くことも怖ろしくてできない。




「綺麗事だな」

「・・・っ」

「この殺伐とした世界で、その様なきれいごとを言う者がいるとは」

「死んでいい人間なんて、いないわ」




綺麗事なのかもしれない。
誰にも傷ついてほしくないなんて。

争いの絶えないこの世界でそんな私の言葉は通用しないことも。
きっと、今ではわかる。




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