完璧執事の甘い罠


「お前がどう喚こうが、泣こうが、俺にはどうでもいいことだがな」

「・・・ひどい」

「あれは、おれに仕えていた騎士。言わば俺様のものだ。それをどうしようが、俺の勝手。他国の姫君にとやかく言われる筋合いはない」

「それはそうかもしれないけれど・・・。ならば、大切にしようとは思わないの?護りたいとは?」



なにを言っても通用する相手ではないことは、空気でわかる。
誰かの言葉に耳を傾けるような人物ではない。
そもそもそう言う人物ならば、このような出会い方はしなかっただろう。




「使えるものは使う。役に立たないモノをいつまでも持っているのはバカのすること」

「・・・あなたとは、分かり合えそうにない」

「分かり合う?馬鹿な事を。分かり合う必要なんてどこにある?必要なのは、いかに自分の思うままに動かすための知識と知恵とそれだけの実力があるかどうかだ」

「力だけで、人を動かせると思ったら大間違いだわ」




人は物じゃない。
そう思う私のそれも、ただの綺麗事でしかないのだろうか。
この人は、人をモノのように扱えるだけの権力も実力もある。

だから、それがまかり通っているのだ。




< 185 / 357 >

この作品をシェア

pagetop