完璧執事の甘い罠


「お送りできるのはここまでだ。この先の国境を越えればアルバーナ王国になる」

「・・・」

「おそらく、ダリウスに戦争を仕掛けようと臨戦態勢のアルバーナの騎士がいるはずだ。敵と間違われて殺されないように気を付けることだな」




国境あたりまで送ってくれたダリウスの騎士はとても冷たく冷淡な口調でそう言った。
私は黙って頷くと唇をかみしめ歩き出した。




――期限はひと月。ひと月後お前を迎えに行く。もしも約束を守らなかった時には・・・





クロードの言葉を思い出す。
私はグッと拳を握りしめた。

こうするしかない。
私は護りたい。



もう、大切な人を失くすのは嫌だ。
側にいられなくてもいい。
生きてさえいてくれたら。




「・・・でも、よかった」



ひとりになって、ポツリと独り言。
心細くてたまらない。




「ジルと両想いじゃなくて・・・」



フラれていてよかった。
今、心からそう思う。




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