完璧執事の甘い罠


もしも、あの告白にジルが答えてくれていたら。
私たちが、恋人同士になっていたとしたら。


きっとこの決断はできなかった。
出来たとしても時間がかかったし、きっと心がもっと張り裂ける思いだったはず。



ジルに、フラれていてよかった。
踏ん切りが付けられる。




それでもきっと好きだけど、好きって思われていて離れるよりずっといい。





「・・・よかった」



よかった。
そう何度も言い聞かせるように呟く。


だって、そう思っていないと立っていられない。
きっと、この後みんなの元に戻って笑えない。




悟られないように。
最後のその時まで笑って過ごしたい。





遠くの方に、たくさんの人影が見え始めた。
ああ、戻って来れた。




私の大切な人たちのいる場所。
大切な人たちの側。





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