完璧執事の甘い罠
結局、ジルはその日は目を覚ますことはなかった。
私は仕方なく自分の部屋に戻る。
部屋の前までノエルに送ってもらった。
「ありがとう」
「ああ。・・・お前、本当になにもなかったんだよな?」
「ふふ、どうしたの?そう言ってるじゃない」
「あの国がなにも得なく奪ったものを手放すとは考えられない」
ノエルのまっすぐな瞳。
私は、そらしたらいけない。
瞳が揺れないように、動揺を悟られないないように。
「じゃあ、寝るね。おやすみ」
「・・・ああ。ゆっくり休め」
ノエルと別れ、私は部屋に入る。
ふと、足元に何かが落ちているのに気づく。
扉の隙間から入れられたようなそれは、一枚の紙だった。
私はそれを拾い上げて広げる。
『いつでも、見ている』
そう書かれたその紙。
私は一瞬肩を震わせる。
本当にいるんだ。
この城の中に、ダリウス王国の人が。