完璧執事の甘い罠
ジルは、それから少しずつ回復していった。
私は毎日ジルの元に通い看病に勤しんだ。
「ひな様、大変ご心配をおかけし、申し訳ありません」
「よくなってよかった」
完全に傷が治ったわけではないけど、動けるようにまで回復したから任務に戻ることになった。
「やっと、執事に戻ってもらえるね」
「はい。誠心誠意つとめさせていただきます」
ジルは丁寧に頭を下げる。
私は精一杯の笑顔を浮かべた。
「レッスン、してくれる?」
「・・・もちろんでございます」
ジルの事が好き。
きっとその事実だけは、これからも変わらない。
だからこそ、最後のその時までできる限り側にいたい。
「では、132ページを開いてください」
心地いいジルの少し低めの声。
私は言われたとおりに本を開く。
すらっと伸びた指が本の一文を指し、綺麗な声で読み上げていく。
その一連の流れに、少し泣きたくなった。