完璧執事の甘い罠
日下部ひな。
それが私の名前。
古びたアパートでひとり暮らしをしている。
去年、高校を卒業してからはアルバイトで生活をしている。
なんでそんな生活をしているのかというと・・・。
5年前、大好きだった両親が揃って事故によって亡くなった。
それまで、ごく普通の幸せな家族の温もりの中で生きてきた私にはショックが強すぎて、それからは、いろいろなことがどうでもよくなっていた。
他人や親戚の、同情の視線が苦しくて。
なるべく人と関わらないように生きてきた。
あの温かい日常がもうないのなら。
私は何もいらない。
世界は、私に厳しくて。
どうして私だけがこんなにどん底なんだろう。
もっと他にも。
狡く、あくどく生きている人だっているはずなのに。
どうして世界は、私を一人にしたのだろう。