完璧執事の甘い罠
「我が国の名産といえば、結晶石もあります」
「結晶石・・・?」
「エメラルドグリーンの澄んだ綺麗な石のことです」
エメラルドグリーンの石・・・。
そう聞いて、私はお母さんの形見のネックレスを思い出した。
そうだ。
お母さんがこの世界の人だったならあれもこの世界のもの。
この世界にいた時に持っていたものだったんだ。
故郷の石を大切に持ってた。
お母さんにとってもこの世界が大切だったってこと。
お母さんは、この世界から突然あっちに行ってどうだったんだろう。
戸惑ったり悲しかったりしたのかな。
その中で、お父さんに出会ってあの世界で生きていこうと決めたのかな。
「ねえ、ジル。その結晶石ってこれのこと?」
私はお母さんのネックレスを取り出してジルに見せる。
「これは・・・」
ジルはそれを見てハッとしたように眼を見張る。