完璧執事の甘い罠


「我が国の名産といえば、結晶石もあります」

「結晶石・・・?」

「エメラルドグリーンの澄んだ綺麗な石のことです」



エメラルドグリーンの石・・・。
そう聞いて、私はお母さんの形見のネックレスを思い出した。

そうだ。
お母さんがこの世界の人だったならあれもこの世界のもの。
この世界にいた時に持っていたものだったんだ。



故郷の石を大切に持ってた。
お母さんにとってもこの世界が大切だったってこと。
お母さんは、この世界から突然あっちに行ってどうだったんだろう。
戸惑ったり悲しかったりしたのかな。


その中で、お父さんに出会ってあの世界で生きていこうと決めたのかな。




「ねえ、ジル。その結晶石ってこれのこと?」



私はお母さんのネックレスを取り出してジルに見せる。



「これは・・・」



ジルはそれを見てハッとしたように眼を見張る。




< 200 / 357 >

この作品をシェア

pagetop