完璧執事の甘い罠
「本日より、姫としての教養やマナーを身につけていただくため、レッスンを始めます」
朝、食堂に行き朝食をとっていると、ジルが相変わらずのトーンでそう言った。
レッスン・・・?
私、まだ姫になるなんて一言も・・・。
ああ、そうだ。
私の意見なんて関係ないんだった。
「・・・やりたくない」
「今のままでは、公の場に出ることはおろか姫として国民の前に立つこともままなりませんよ」
「別に、私はなりたくてなったわけじゃないし」
私は、お姫様になりたかったわけじゃない。
私は、お母さんたちのところに行きたかったんだ。
「はぁ・・・。あなたは本当に、アリス様の御令嬢なのですか?」
「知らないわよ。じゃあ、違うアリスなんじゃないの?」
アリスアリスって、私はお姫様だったお母さんなんて知らない。
いまだに信じられないんだから。