完璧執事の甘い罠
夜。
ここから見える星は、アルバーナの空と同じはずなのに淀んで見える。
私は部屋の隅にうずくまり、窓の外を眺める。
溢れ出す涙を拭うこともせず。
どうせもう戻れないのなら。
ジルの事を想うだけは許してほしい。
ジルは今、何をしてる?
同じ空を見ているだろうか。
そんな事を考えているだけでも少しだけ心が軽くなる。
テキパキと完璧な執事をしているんだろうな。
私がいなくなった後は、誰の執事をやるのだろう。
もう、私を守ってくれる私の執事ではなくなってしまったんだ。
そうなれば、ジルは私の事なんて忘れてしまうんだろうか。
ジルは仕事人間だもの。
新しい主人ができればその人に尽くすはず。
私の事なんて・・・。
せっかく浮上した気持ちも、自分の思考回路で沈んでいく。
バカだな。
どうせ答えなんて出ないんだから良い方に考えたら良いのに。