完璧執事の甘い罠
ああ。
前にもこんなことがあったと。
あの時は、ジルが上書きしてくれたんだ・・・。
私がわがままを言ってそうしてもらった。
でも、もう、上書きしてくれる人は、いない・・・。
そう思うと、ツーッと涙が頬を流れた。
ジル。
ジル・・・。
ジルだったらいいのに。
目の前にあるこの顔が、この人が。
ジルだったら、どんなにいいか。
「興が冷めた。次までにはもう少しましな態度を身につけておけ」
不機嫌そうにそう言うと、私の上からどきそのまま部屋を出ていってしまう。
なんだったの・・・。
そんな風に辞められるのなら、キスさえもしないでほしい。
ジルの温もりだけを、覚えていたいのに。