完璧執事の甘い罠
私が連れてこられたのは、城門の前の広場。
この門から出れば城下におりれるのだろうか。
今すぐにでも、クロードを突き飛ばして走って逃げたい気持ちに駆られる。
それでも、かろうじて城門は開いているけれどその両側には門番が立っている。
「アルバーナの騎士たちがすぐそこまで迫っている」
「・・・っ!」
「奴らの目的はお前の奪還だ。ならば、その目的を絶やしてしまえばいいと思わんか?」
さっき言っていたことを実行に起こすんだ。
私を、殺すつもりなのね。
ずっと、死ぬつもりだった。
大好きな両親が死んでしまってから。
生きる希望なんてなくて、絶望しかなくて。
この世界に来てからも、ずっと生きる希望なんて持てずにいた。
そんな私に生きる力をくれた人たちがいたんだ。
私はその人たちのために生きると決めた。
でも―――。
死んで両親のもとに行けるのなら。
それでも、あんな奴に殺されるのなんてまっぴらだ。