完璧執事の甘い罠
医師が出ていった後、私はベッドの脇に椅子を持っていき座る。
ひな様の眠る姿をじっと見つめた。
熱があるとおっしゃっていた。
ひな様は、とても苦しそうに荒い呼吸を繰り返していた。
出来る事なら代わってあげたい。
「ひな様・・・」
私は、恐れたのだ。
ひな様の想いを受け止めることを。
私の事を好きだと言ってくださったひな様。
本当は、嬉しかったというのに。
私とひな様は、主と執事という間柄。
決してそのような感情を抱いてはいけないと。
そんな事に捕らわれず、自分の想いときちんと向き合っていれば。
そして、それを包み隠さずひな様にさらけ出せていれば。
このような結果は生まれなかったのだろうか。
ひな様の笑顔を、今も変わらず側で見ていられたのだろうか。