完璧執事の甘い罠
ひな様を取り戻し、我々はそれ以上の追撃をやめ撤退した。
ダリウスも反撃してくるわけでもなく大人しくなり、戦争は収束したのだ。
ひな様を目の前で奪う、その目的を果たしたのかクロードは満足そうに笑っていた。
その光景が今でも脳裏にチラつく。
向こうの思うツボに乗せられた気がする。
初め、ひな様を攫われた時から。
こちらに潜入していたスパイにも気づかずに。
メイドや執事を纏める者として失格だ。
「うぅ・・・、う・・・」
ひな様がうなされ始め、私は立ち上がるとひな様に声をかける。
「ひな様!大丈夫ですか!?ひな様!」
「苦しいのか?」
ノエルも焦ったようにひな様を覗き込んだ。
滲む汗を拭ってあげることしかできない。
しばらくすると、ひな様は落ち着いたが、目を覚ます様子はなかった。