完璧執事の甘い罠


私にとっては、両親のいない世界なんてどこでも同じ。
少し前の私にとっては、どうだったかなんてわからないけれど。



「すぐに受け入れられるものではないでしょう。なにか困ったこと不安なことがあれば何でも仰ってください」

「はい。ありがとうございます。ジルさん」

「・・・私の事は、ジルで構いません」

「でも・・・、やっぱり、ジルさんがいいです」




私の感じている距離感と、他の人が感じている私との距離感が違うのが居心地が悪い。
だから、無意識的に線引きをしてしまう。
踏み入られるのが怖くて。


でも、そうすると、彼らは決まって悲しそうな顔をするのだ。
心地が悪い。




「そう、ですか。そろそろ昼時ですので、食べられそうなものを用意してきます。少し席を外しますね」

「・・・はい」



彼らの知っている私って、いったいどんなだったんだろう。
今の私と、どこか違っているんだろうか。



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