完璧執事の甘い罠
彼らの言っていることはすべて本当だと思う。
この身体の傷も痛みも本物だから。
それでも。
それが現実に私のみに起きていることだと完全に理解することはやっぱり難しくて。
ひな様、と呼ばれることも。
大事そうに見つめられることも。
全てが慣れないのだ。
「どうして忘れちゃったんだろう・・・」
もしすべてが本当で。
私が命を投げ出すほど大切な場所がここに在ったのなら。
どうして、そんな大切なことを私は忘れてしまったんだろう。
私はじっとしていられなくてそっとベッドから起き上がった。
動くたびに傷口が痛む。
それでも、歩けないほどではなかった。
私はそっと部屋を抜け出した。
闇雲に歩くと外に出て、そこは中庭のような綺麗な花壇がある場所。
ふと出てきた場所を振り返ると、本当にお城だった。