完璧執事の甘い罠
「なにやってんだ?・・・つか、誰?」
ひとりで部屋にいると、ただ気分が沈むだけで。
そっと部屋を出てお城の中を探索していると不意に声をかけられた。
振り返ると怪訝な顔で私を見るひとりの男の人。
恰好は、ジルみたいな執事服ではなくブーツにパンツの裾をいれ、紺を基調とした色の上着とパンツ。
上着は銀の留め具で前を止められるようになっていて、とてもかっこいい服装。
腰に下げているのは、あれは・・・ウソ、剣?
本物?
「あなたこそ、誰」
「いや、あんたが先に応えろよ。聞き返すな」
「なっ、」
これまで、私の前に現れるこの世界の人たちは私を姫扱いする人ばかりだった。
厳しく冷たいジルだって、私に対して敬語だし、ヨハンはもちろん当然のように敬語だ。
だからこそ、その人の態度は新鮮で少し驚く。
「・・・日下部ひな」
「くさかべひな?変な名前だな」
「ひな、が下の名前!変って、あなたたちが変なのよ。私は名乗ったけど」
「・・・ああ、俺はノエル=クロッツ。この国の騎士団長だ」