完璧執事の甘い罠
「なんだか、意外です」
「はい・・・?」
「ジルさんって、もっとクールな人なのかと」
「・・・本来は、もっと冷静に物事を判断し行動するタイプですなはずですが」
ジルさんは、少し恥ずかしそうにメガネをクイッとあげた。
私はそれがおかしくて、クスクスと笑う。
「ようやく笑っていただけました・・・」
「え・・・?」
「ひな様の笑顔が、見たかったんです」
笑顔・・・。
そっか、そんなものをこの人は待っていてくれたんだ。
笑う事なんて、ずっと忘れていたかもしれない。
ここに来てからの私は、そうじゃなかったのかな。
ちゃんと、笑っていたのかな。
「ジルさんが知っている私の事、教えてもらってもいいですか?」
「はい。もちろん。どんな些細な事でもお答えします」
「ありがとう・・・」
知りたい。
私はどんなだったのか。
笑っていたのか、幸せだったのか。
もう、死にたいなんて思ってはいなかったのか。