完璧執事の甘い罠
「・・・ふぅ」
小さく息を吐く。
久しぶりに動いたからだろうか、少し疲れてしまった。
でも、悟られないように隠れて息を吐く。
和やかな空気を壊したくなかった。
こんな暖かい空気、お母さんたちがいなくなって初めて。
「お身体に障ります。そろそろ中へ・・・」
気づいてしまったのか、ジルさんはそう言って私の背に手を添えた。
私は首を横に振る。
「もう・・・少し」
「しかし、お疲れになったのでは・・・」
私はそれでも頑なに首を横に振る。
この時間を終わらせたくない。
おわらせたくないよ。
「ひな様?どうされたのですか?」
「話・・・私の事話してくれるって言った」
「もちろんです。ですが、一度部屋に戻り・・・」
「やだっ!」
宥めようとするジルさんに私はそう叫ぶ。