完璧執事の甘い罠
「楽しかったの・・・。ジルさんと話してた時間が・・・。だから、終わってほしくなかったの」
「え・・・」
「私、あんなの初めてだったから。こんな風に、心配してもらうのも。私の名前を大事そうに呼んでもらうのも」
「初めて・・・」
ジルさんは、どれだけの事を知っているのかな。
私は、なにを話したのかな。
「両親が亡くなって・・・。親戚の人とか、心配だ可哀想だって言ったけど・・・。口先だけだってすぐわかった。本気で心配してくれる人なんて・・・いなかった」
「ひな様・・・」
「誰とも関わりたくなくて・・・、人との接触を断ってたから、人と楽しく会話するなんて・・・なかったし」
それでよかった。
二人のいない世界は色褪せて。
独りぼっちになって、孤独だった。
だから。
いっそ一人ぼっちでよかったの。
「だから、楽しかったの・・・」