完璧執事の甘い罠


「私、これだけは絶対に手放したくなかったの。それを、ジルさんにあげたんだもん。きっと、今の私にとってジルさんがとても暖かいように、きっと前の私もジルさんに助けられたんだね」

「ひな様・・・」


どんな想いがあったのか、わからないのがもどかしい。
感謝?歓喜?それとも・・・。



「わかりました。・・・ではこれは、ひな様がすべて思い出したのちにひな様にお返しすることにします」

「結局、返されちゃうの?」

「ひな様がどれだけの思いで私にくださったのだとしても、これはやはりひな様の元にある方がいいと思うのです」

「そっか・・・。じゃあ、そうしてくれる?」

「はい」




ジルさんは、私が思いだすことを願ってる。
きっと他の人も。

私は、思い出せるのかな。
どうしたらいいのか、わからない。

思い出せる気配がないの。



「ジルさんは、私に思い出してほしいよね・・・?」

「それは・・・。どうでしょう。今のひな様も、ひな様という事には変わりはないのですし。関係はこれからでもまた作り上げていくことは可能ですから」

「うん・・・」


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