完璧執事の甘い罠
ハッとして目をあけた。
目をあけるとそこは、昨日の夜眠った医務室のベッドの上。
「私・・・」
ドクン、ドクン、と心拍数が上がる。
私、思い出した。
なにもかも。
私がここにいるわけも。
ここで暮らしたあの日々も。
ネックレスを手放したその意味も。
「どうして・・・」
涙がぽろぽろと溢れだす。
思い出さなければよかった。
思い出す前はあんなにも気になっていたのに。
知りたくて、思い出したくて仕方がなかった。
でも―――。
思い出したくなかった。
思い出したくないから、私はその記憶を封じたんだ。