完璧執事の甘い罠
ダンダン!
戸を叩く音にビクッと身体を震わせる。
「起きてるか?ノエルだ。入るぞ」
扉の向こうからノエルの声が聞こえる。
思い出してから聞くノエルの声は懐かしく、もう戻って来れないと思っていたから泣きそうになる。
でもダメだ。
平常心を装わなくちゃ。
思い出していないひなのままでいるんだから。
「起きてたのか。ジルがお前を呼んで来いって」
「あ、ありがとう。ノエ・・・ルさん」
「・・・ああ」
昨日行っていたテラスでランチだろうか。
時計を見ればもうお昼前。
私、寝過ごしちゃったんだ。
「もしかして、朝も来てくれた?」
「・・・ああ。お前寝てたけどな」
「そっか・・・」
起こさずにいてくれたんだ。
「うなされてたみたいだったけど、大丈夫か?」
「え?あ、うん。別に・・・。なんの夢見てたか忘れちゃったし」
「そうか」