完璧執事の甘い罠


ダンダン!
戸を叩く音にビクッと身体を震わせる。



「起きてるか?ノエルだ。入るぞ」



扉の向こうからノエルの声が聞こえる。
思い出してから聞くノエルの声は懐かしく、もう戻って来れないと思っていたから泣きそうになる。
でもダメだ。
平常心を装わなくちゃ。

思い出していないひなのままでいるんだから。




「起きてたのか。ジルがお前を呼んで来いって」

「あ、ありがとう。ノエ・・・ルさん」

「・・・ああ」



昨日行っていたテラスでランチだろうか。
時計を見ればもうお昼前。
私、寝過ごしちゃったんだ。



「もしかして、朝も来てくれた?」

「・・・ああ。お前寝てたけどな」

「そっか・・・」



起こさずにいてくれたんだ。



「うなされてたみたいだったけど、大丈夫か?」

「え?あ、うん。別に・・・。なんの夢見てたか忘れちゃったし」

「そうか」



< 264 / 357 >

この作品をシェア

pagetop