完璧執事の甘い罠
「ひなっ!ひな!」
テラスで昼食を食べ始めてしばらくすると、パタパタと慌ただしい足音が近づいてくる。
「王様!お待ちください!」
姿を現したのは王様で、後から王様の側近が焦ったように追いかけてきた。
王様は息を切らし、焦った様子で私に駆け寄ってきた。
「ひな、身体の調子はどうだ?痛みは?」
「王様、落ち着いてください。ひな様は記憶をなくしているのです。突然そう言われても戸惑ってしまいます」
「そ、そうか。そうであったな。すまない。ひな、わしはひなの祖父である。アルバーナの王だ」
側近にそう言われ、納得したように頷くと落ち着いた様子でそう説明してくれた。
「は、はい。あの、傷口はまだ痛みますけど、もう平気です・・・」
私は簡単にそう答えた。
私は王様とは初対面、そう自分に言い聞かせながら。