完璧執事の甘い罠
次の日の朝。
目を覚ましてしばらくするとノックの音が聞こえる。
誰だろう・・・。
「ひな様、私です。・・・ジルです」
扉の向こうから聞こえてきたのは、ジルの声。
私はピクリと肩を震わせる。
まだ、会いたくなんてなかったのに。
なにを話していいか、わからない。
「・・・少し、お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「今は、話したくない・・・」
「わかっています。私の話を聞いていただけるだけでいいんです」
いつもなら、私が嫌だと言えば引いてくれるはずのジルが、決意のこもった声でそう言う。
私は仕方なく恐る恐る扉を開けた。
「ありがとうございます、ひな様」
扉を開きジルと顔を合わせる。
ジルは少しホッとしたように表情を緩めると、お礼を言って頭を下げた。