完璧執事の甘い罠
「・・・怒りに来たの?」
私が椅子に座り、その前にジルが跪いて視線を合わせる。
「私がひな様を怒ることなど、なにもありません」
「でも・・・」
「記憶が戻ったことを黙っていたことなら、私はひな様を責めるつもりもそんな資格もございません」
それは、私が王女でジルが執事だから?
でも、今までなら間違ったことはちゃんと指摘してくれた。
時には厳しく、たまに優しく。
私を正しいところに導いてくれてた。
「そう・・・させてしまった責任は、すべて私にございます」
「え・・・」
「私が、ひな様の想いに寄り添わず、突き放してしまったからこそ」
「・・・それは、」
でも違う。
わかってるの。
本当は。
それが現実で、受け入れなくちゃいけないって。
人の気持ちは、そう簡単じゃないって。
好きな人に好きになってもらうって、どれだけの奇跡なのかって。