完璧執事の甘い罠


「・・・いで・・・」

「はい?」

「勝手に、決めないでよ!」

「ひな様・・・」




城を出るってことは、もう会えなくなるかもしれないってこと?
ジルがこうして側にいてくれることは、なくなるという事。

そんなの、そんなの・・・!




「意味ない・・・。そんなの、ここにいる意味がない」

「意味・・・?」

「ジルが側にいないなら、ここにいても、ダリウスにいても、同じだよ!」




ポロポロと涙があふれる。
だって悲しい。
ジルに私なんていらないって言われたみたいで。

だってそうでしょ?
ジルは、私から離れることなんとも思わないってこと。

ただ仕事を変えるだけ。
その程度の事なんだ。




「ジルにとっては・・・、仕事でしかなかったかもしれないけど・・・!私にとっては、ジルは・・・、この世界のすべてなの!」



大げさなんかじゃない。
ジルがいたから生きてこれた。
ジルがいないと、生きる意味なんてない。



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