完璧執事の甘い罠
お母さん達のところにいきたかった。
全てを捨てて、あの世界を捨ててでも。
その矢先に辿り着いたこの世界でジルと出会って。
私に居場所をくれたのは、ジル。
厳しく、時には優しく私に寄り添ってくれた。
ジルがいるから生きていける。
本当に、そう思った。
「好きなの、ジル。側にいて」
「ひな様・・・。ですが、許されれことではありません。一執事であるこの私が・・・」
立場が違う。
そう言われるんだろう。
でも、そもそも私は、お姫様なんかじゃない。
ごく平凡な家庭に生まれ育った1人の女の子だ。
そんな理屈は通らないかもしれないけれど。
それでも、そんな理由でせっかく伸ばされた手を離すなんてことしたくない。
絶対に離したくはないの。