完璧執事の甘い罠
幸福への道のり
「ひな様、紅茶をお持ちしました」
身体の調子もほとんどよくなって、アルバーナでの生活が戻りつつあった。
一度は任を降りると言っていたジルも、相変わらず私の側にいてくれている。
ジルが私を好きだと言ってくれて、私もジルの事が大好きで。
私たちの間で、変わったことといえば。
「ほら、ジルも座って」
「・・・はい」
こうして、10時と3時の紅茶の時間だけ、同じ席に座り一緒に紅茶を飲むようになったこと。
最初はそれさえもジルはためらったし、今でもすんなりと座ってくれることは少ない。
それでも、私が半ば強引に押し通してようやく念願かなった結果だ。
恋人らしいことが他に何もできなくても、この時だけは主と執事ではなく、恋人同士になれる気がする。
ジルはやっぱり少しだけ居心地悪そうだけれど。
それでも、私にとってとても幸せな時間。