完璧執事の甘い罠
まるで夢のような時間。
ダリウス王国で感じた絶望を思えば、今はなんて幸せな日々なんだろうと思う。
「・・・傷跡、残ってしまいましたね」
私の首元を見て、悲しげにジルが言った。
私が自分で傷つけたクビには、うっすらとその傷跡が残っている。
お医者様には、おそらくもうこれ以上は消えないだろうと言われた。
「自分でつけた傷だから・・・」
「しかし・・・!そういう状況に追い込んでしまったのは・・・」
「また自分のせい?もう聞き飽きたよ」
「ひな様・・・」
ジルが自分を必要以上に責めてしまうのも、この傷跡が残ってしまったせいなら。
どうして私は自分で傷つけることしかできなかったんだろう。
あの時には、こうするしかないと思ってた。
クロードに殺されるくらいなら、と。
どうして、どうしてジルたちをもっと信じられなかったんだろう。
そのせいで、こんなにもジルを傷つけてしまった。