完璧執事の甘い罠
テラスの欄干に登り目を閉じる。
目を閉じれば浮かんでくる楽しかった日々。
温もりの日々。
「お父さん・・・お母さん・・・」
深く深呼吸をして。
目を開けた。
ちらりと下を見るとクラリと世界が揺らぐ。
高い・・・。
でも、一瞬。
終えればきっと、会える。
会えるよね。
胸の前で組んでいた手を下ろす。
再び目を閉じ背筋を伸ばした。
もうすぐ、いくから。
だから、また会えたら昔みたいに抱きしめて欲しい。
ひな、って優しい声で呼んでほしい。
「さよなら」
体の重心を前に傾けていく・・・。