完璧執事の甘い罠
こういう時、どうするんだろうと不安になる。
でもきっと、ジルはいたって冷静にその事実を受け入れるんだろうな。
ダリウスに行った時とは違う。
シーエン王国は友好を結んでいる国だし。
きっと、私を大切にしてくれるだろう。
そういう相手になら、ジルは黙ってそれを受け入れる?
でも・・・、そうだよね。
だって私自身、それを受け入れようとしてるんだもの。
姫として、そうしなくちゃいけないんだって諦めている。
最低だ、私・・・。
ジルにあんな風に、好きだって言っておいて。
側にいてほしいと願っておいて。
結局、今の居場所を自分で護りきることができないって、思ってる。
「ひな様、そろそろ城へ戻りましょうか」
「・・・うん。そうだね」
陽もすっかり傾きかけて、楽しかった時間はあっという間に終わりを迎えようとしている。
泣き出したい気持ちをぐっとこらえ、私はジルに向かって笑った。