完璧執事の甘い罠
「お話・・・ですか」
トクン、胸が一つ鳴り私はグッと胸元のジルからもらったネックレスを握る。
聞きたくない。
きっとそれは、私にとっていい知らせではないから。
私の一歩後ろに立っているジルがどんな顔をしているのか、知りたいような知りたくないような。
「はい。お話、というより・・・。ひな様をお迎えにあがりました」
「・・・・・・っ」
「王さまから話は聞いておられると思いますが。正式に、ひな様を私の婚約者として迎え入れようという運びになりましたのでご報告に」
こんなにも早く・・・。
いずれは、そういう話だと思っていた。
こんなにも早くこの時が来るなんて。
さっきまでの幸せな時間が、一気に足元から崩れ落ちていく感覚。
覚悟はしていた。
それでも、こんなにも早くなんて。
幸せな時を噛みしめる余韻も感じられぬまま・・・。