完璧執事の甘い罠
「あの、ひな様と共に私が執事としてどうこうすることとなったのです」
「え・・・?ヨハンが?」
「はい。無事、一人立ちが出来ましたので。共に行くなら、これまで関わりのあったものがいいだろうと王様のご配慮で・・・」
ヨハンが・・・ということは、ジルは・・・?
「一緒に行くのは、・・・ヨハンだけ?」
「はい。他の者はシーエン王国が用意してくださるそうです」
「・・・そ、っか。そうだよね、皆でぞろぞろ行くわけにいかないよね」
ジルは、執事やメイドを取りまとめている。
そんな大切な執事を、私と一緒に行かせるわけがなかった。
もしかしたらジルも一緒に行けるかもって一瞬思ってしまった。
そんな簡単な話じゃなかったよね。
「あ―あ!独身もあと少しか。こんな若く結婚することになるなんて思わなかったな。もっといろんなことしておくんだった」
おどけたようにそう言って、初めてそこでジルを見た。
ジルは、なんとも言えない表情をしていた。
悲しげでもあり、苦しげでもあり、それでもいつもの無表情を作ろうとしているような。
私は見ていられなくなってすぐに視線を反らした。