完璧執事の甘い罠
これまで、ずっとひな様に仕えてきた。
誰よりもひな様のことを想い、お慕いしていると自負している。
だからこそ、シーエン王国に嫁ぐことになっても、ついていくのは自分だと。
恋人として側にいられずとも、執事として側にいられるのなら。
その立場すら危うくするのは本意ではなく、私はいたって冷静に務めた。
それなのに。
私は、共には選ばれなかった。
ならばなんのために。
黙って、言葉をのみこんで。
ひな様を、渡したくはないのに。
私のこの手の中に、抱きしめて大切に大切に守っていきたいのに。
私の想いがかなうことなどないと思っていた。
ままごとのようなこの数日が、ずっと続くわけはないとも思っていた。
それでも。
どこかで願っていた。
ひな様と共にある未来を。
夢、見ていたのだ。