完璧執事の甘い罠


だからこそ私はひな様にお仕えし、ひな様をお慕いした。



「・・・そうだね」




ひな様にとっては、違うのだろうか。
やはり、もしもの話を望んでいるのだろうか。



「――どうして、どうして即答してしまわれたのですか」




思わずついて出た言葉。
先ほどの、エリック王子との会話を思い出す。

婚約の話をすぐに受けたひな様。
躊躇いなく思えた。


私の存在は、少しも引き止める要素にはならなかったのだろうか。




「この婚約を断ったら、どうなってたのかな」

「え・・・」

「もし、シーエン王国との有効が途絶えたら・・・。今度ダリウスが攻めて来た時、立ち向かえなくなる。そうしたら・・・。私の大切な人たちがまた命の危機に迫られてしまうでしょう」

「大切な・・・」




それは。




「私は、ジルが大切なの。だから護りたい。ノエルだって、王さまだって、・・・ヨハンだってそうだよ」





どうしてあなたは―――――。




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