完璧執事の甘い罠
「え・・・?ジル・・・?どうしたの?泣いているの・・・?」
こみ上げてきた感情を抑えることもせず、顔を俯かせ片手で目を抑えた私に、心配そうな声が掛けられる。
どうしてあなたはいつだって、自分の事は考えもせず、誰かのために動けるのだろう。
出会ったあの頃は、あんなにもこの世界を拒み自らの命もないがしろにしようとしていたというのに。
「ジル・・・?ねぇ・・・、どうしちゃったの?」
ひな様が私に近づき顔を覗き込もうとする。
その腕を掴み、強く惹き寄せ腕の中へと抱き寄せた。
「・・・っ!ジル・・・」
「ひな様、愛しています・・・。あなただけを、愛しているのです」
どうしようもないこの感情。
伝えたところで、かわらない未来も。
それでも、伝えずにはいられなかった。
「なにもかも捨てて、貴方と共に生きたい・・・」
それでもいい。
貴方のためならば。