完璧執事の甘い罠


「それもいいかもしれないね・・・」

「・・・ですが、行ってしまわれるのでしょう?」



きっとひな様は、覚悟を決めておられるのだ。
私なんかよりもずっと。




「この国の人たちも、護りたいの・・・」





私の腕にすっぽりと収まるほどの小さな体。
こんな小さな体でどれだけの物を抱え込んでいるのか。


ひな様のいた世界がどのような場所かは知らないが、きっとそこにいればこんな重圧もしがらみもなにもなく生きて行けたのだろう。

ひな様にとっての幸せは、きっとその世界にあったのだ。
ありす様がおられて、お父様がおられて。
きっと、その世界が彼女のすべてだったのに。



この世界に来たことで、とても辛い定めを生きる羽目になってしまった。



それを思えば、この世界に来なければ、ひな様は幸せであったのではないかと。


もしくは、私と出会わなければ。
ひな様が大切だと言ってくださるモノに出会わなければ。

しがらみも、なにもなくこの国も人もすべて、見捨てて自分の幸せに生きることもできただろうに。



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