完璧執事の甘い罠
それこそ、最初の頃のようにすべてを諦め、命をないがしろにしていた頃だったら。
きっと、なにかは違っていた。
私がしてきたことはなんだったのだろう。
こんな風に、姫として立派に育て上げ、私の手から離すため・・・。
そんなつもりは毛頭なかったのに。
結果としてそうなってしまった。
「ジル・・・。今夜は、側にいてくれる?」
「もちろん・・・。ひな様がそう望んでくださるのなら」
不毛な恋だったのかもしれない。
私がひな様を想うことは。
そんな事、最初からわかりきっていたこと。
それでも、やはり望んでしまうのだ。
この手で幸せにしたいと・・・。
「時間が許すまで、たくさん話をしよう」
「ええ」
「手を繋いで、できるだけ側にいて」
「ええ」
この愛すべき人を。
私は生涯忘れることなどできないだろう。