完璧執事の甘い罠
この世界では、簡単に連絡を取り合うことができない。
手紙を書くか、会うしか連絡手段はないのだ。
姫である私が執事であるジルに手紙を書くなんて、きっと普通はないことで。
不穏な動きをするわけにはいかない。
人質というわけではないけれど。
私の婚約には、意味があるものなのだから。
「ひな様・・・。あの、よろしければジルさまに一言送られますか?」
「え・・・?」
「私は、ジルさまにとてもお世話になっていますので、こちらでの生活を報告するために文を書こうと思っているんです。ですから、差し出がましいかもしれませんが・・・」
「書く!書いてもいいの?ちゃんと、ジル読んでくれるかしら」
「もちろんです。ジルさまに宛てて送りますから」
思わぬヨハンの提案に、食いつく。
だって、そんな事でもないとジルとやり取りすることなんてできない。
どうしたって、私のジルへの想いは簡単に消えてはくれないの。