完璧執事の甘い罠
綺麗な噴水を眺め、エリックさまとの時間を過ごす。
本当に、綺麗。
ジルと一緒に見たかったな・・・。
無意識に、ふとそんな事を考えていた。
「あ・・・・・・」
「ひな様?」
思わず、ぽろっと零れた涙。
思わぬところでジルを思い出してしまって、感情が抑えられなかった。
「ご、ごめんなさい・・・。とても綺麗だなって思ったら、なんでだろう・・・」
慌ててごしごしと目元を拭いながら私は誤魔化すように笑った。
他の人の事を考えていたなんて言えない。
私は、ここでうまくやらなくちゃいけない。
国のために。
それはきっと、ジルのためにだってなるから。
「無理に止めようとしないで。ほら、目元が赤くなってしまって」
「・・・でも、」
「大丈夫だから。泣きたい時は、泣いたらいい。でも、一人では泣かないで。僕の隣で泣いてくれたらいい」
エリックさまはそう言いながら、取り出したハンカチで優しく抑えるように涙を拭いてくれた。
優しくしてもらう資格なんてないのに。
私は、エリックさまを好きにはなれない。